球体写真とカメラ・オブスクラ

眼球の裏側から、網膜に写る風景をのぞいてみたい。
その欲求から、球体写真は生まれた。内側に感光乳剤を塗ったガラス球を、そのままピンホールカメラにする。針穴を通った光が、球の内側に世界を逆さに結ぶ。レンズも手の技も通さず、光そのものが像になる。
手で抱えられるほどの球の中に、その場所の風景がまるごと封じ込められる。
レンズを使わないピンホールには、近くも遠くも同時に焦点が合うという性質がある。そのため、針穴からの距離がすべて違う球面のフィルムでも、内側全体にくっきりした像(パンフォーカス)が結ぶ。歪めるものを通らない、まっすぐな光の束だけで、風景と球の中の像が相似形でつながる。
球体写真は、1997年に完成させたオリジナルのピンホール写真術である。ガラス球がフィルムとカメラの両方を兼ね、球の内側全体に一度で像を結ぶ。
私の知る限り過去にこのようなカメラもしくは写真は存在せず、球体写真と名付けた。大竹敦人「球体写真」(府中市美術館 第3回府中ビエンナーレ、2006)
「乳化」シリーズの球体写真は、シカゴ美術館(The Art Institute of Chicago)に収蔵されている。
発表の順に、作品ごとのページがあります。写真と説明は、作家がまとめたポートフォリオ(1995–2006)と作品資料(2006–2008)によります。
Emulsification / 乳化1997
Shadow of Witness / 影の証人1997–1998
Bud of Surface of ground / 地表の芽1999
乳化景 / emul-vi*sion2001
乳化庭 / Garden of Emulsification2001
水面/拾集(銀山湖)2004
Spherical photograph / Emulsification(ギンザコマツ)2006
水面/拾集(多摩川)2006
乳化庭/三本の楠から2006
水面/拾集(銀山湖)ほか ― たねとしかけ2008
水面/拾集(養老川)2008
View of Time / 時間の風景1997
mirage1999
Alef / 光闇の器(温室)2000
Alef / 光闇の器〜光の振幅へ2002
Alef / 光闇の器〜理科室の記憶2004
視点と視線の海2006
光闇の器(同潤会アパート再生棟)2006
光闇の器(旧高田小学校)2006
光闇の器/階調2006
光闇の回廊/群馬の森2008
Point of view2017評の文を載せるときは、筆者・媒体の許しを確かめます(今は短い引用と紹介だけ)。
わたしは、ものを見るとき、眼の中で何が起きているのかを、ずっと知りたかった。できることなら、眼球の裏側から、網膜に写る風景をのぞいてみたい。球体写真は、その願いから生まれた。
ガラス球に、小さな針穴をひとつあける。レンズも、わたしの手の技も通さない。まっすぐに入った光が、その場所の風景を、球の内側いっぱいに結ぶ。像をつくるのは、わたしではなく、光と場所と時間だ。わたしにできるのは、場所を選び、訪れ、とどまり、待つことである。
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(メッセージは下書きです。塾長が直して完成させます)