ATSUHITO OTAKE

大竹敦人

球体写真とカメラ・オブスクラ

球体写真

SPHERICAL PHOTOGRAPH / 球体写真

風景が写し込まれたガラス球
水面/拾集(多摩川)奥多摩町棚沢 水神の滝付近 2006 府中市美術館蔵

眼球の裏側から、網膜に写る風景をのぞいてみたい。

その欲求から、球体写真は生まれた。内側に感光乳剤を塗ったガラス球を、そのままピンホールカメラにする。針穴を通った光が、球の内側に世界を逆さに結ぶ。レンズも手の技も通さず、光そのものが像になる。

手で抱えられるほどの球の中に、その場所の風景がまるごと封じ込められる。

球体写真の仕組み

外の風景 針穴(ピンホール) 内側に写真乳剤を塗る(球面のフィルム) 外側は光を通さない (球そのものが暗箱になる) 像は球の内側いっぱいに、上下左右が逆さに写る
  1. 口の開いた空洞のガラス球の内側に、写真乳剤を塗る。
  2. 外側を光が入らないようにし、口に針穴をあけた板を付ける。ガラス球が、フィルムとカメラの両方になる。
  3. 撮影の場所に球を置き、針穴を開いて光を入れる。
  4. 現像・定着すると、球の内側全体に、その場の風景がネガの像として残る。

レンズを使わないピンホールには、近くも遠くも同時に焦点が合うという性質がある。そのため、針穴からの距離がすべて違う球面のフィルムでも、内側全体にくっきりした像(パンフォーカス)が結ぶ。歪めるものを通らない、まっすぐな光の束だけで、風景と球の中の像が相似形でつながる。

ほかにない写真術

球体写真は、1997年に完成させたオリジナルのピンホール写真術である。ガラス球がフィルムとカメラの両方を兼ね、球の内側全体に一度で像を結ぶ。

私の知る限り過去にこのようなカメラもしくは写真は存在せず、球体写真と名付けた。大竹敦人「球体写真」(府中市美術館 第3回府中ビエンナーレ、2006)

「乳化」シリーズの球体写真は、シカゴ美術館(The Art Institute of Chicago)に収蔵されている。

WORKS / 作品

発表の順に、作品ごとのページがあります。写真と説明は、作家がまとめたポートフォリオ(1995–2006)と作品資料(2006–2008)によります。

球体写真

Emulsification / 乳化1997Shadow of Witness / 影の証人1997–1998Bud of Surface of ground / 地表の芽1999乳化景 / emul-vi*sion2001乳化庭 / Garden of Emulsification2001水面/拾集(銀山湖)2004Spherical photograph / Emulsification(ギンザコマツ)2006水面/拾集(多摩川)2006乳化庭/三本の楠から2006水面/拾集(銀山湖)ほか ― たねとしかけ2008水面/拾集(養老川)2008

カメラ・オブスクラ

View of Time / 時間の風景1997mirage1999Alef / 光闇の器(温室)2000Alef / 光闇の器〜光の振幅へ2002Alef / 光闇の器〜理科室の記憶2004視点と視線の海2006光闇の器(同潤会アパート再生棟)2006光闇の器(旧高田小学校)2006光闇の器/階調2006光闇の回廊/群馬の森2008Point of view2017

立体ピンホール写真

Optic Topography / 光学的地理A2007プンクトゥム/光2008

ステンレス写真

Dialogue / 対話1994–1998

写真

air1995–1999

ドローイング

Image ~ Reflection ~ Picture / 司馬江漢へのメッセージ2001

EVALUATION / 評価と収蔵

評の文を載せるときは、筆者・媒体の許しを確かめます(今は短い引用と紹介だけ)。

MESSAGE / メッセージ

わたしは、ものを見るとき、眼の中で何が起きているのかを、ずっと知りたかった。できることなら、眼球の裏側から、網膜に写る風景をのぞいてみたい。球体写真は、その願いから生まれた。

ガラス球に、小さな針穴をひとつあける。レンズも、わたしの手の技も通さない。まっすぐに入った光が、その場所の風景を、球の内側いっぱいに結ぶ。像をつくるのは、わたしではなく、光と場所と時間だ。わたしにできるのは、場所を選び、訪れ、とどまり、待つことである。

メッセージの続き、大切にしていること、作家の言葉と評論家の言葉へ →

(メッセージは下書きです。塾長が直して完成させます)

BIOGRAPHY

1970
東京生まれ
1995
東京芸術大学 美術学部 絵画科 油画専攻 卒業
1997
東京芸術大学 大学院 美術研究科 絵画専攻 油画 修士課程 修了
1999–2006
東京芸術大学 油画研究室 助手・講師
2006–2020
工学院大学 講師、准教授
2007
こども美術教室 がじゅく を始める
収蔵
東京芸術大学大学美術館、The Art Institute of Chicago、愛媛県美術館、府中市美術館、群馬県立近代美術館、群馬県みなかみ町

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